神楽坂駅から徒歩2分。「生涯楽しみ続けられる日本の現代と伝統の良きものを届ける」をコンセプトの店がある。古民家を改装して供される繊細なフレンチキュイジーヌは、日夜グルマンたちの舌を唸らせている。路線が犇めく都内にて、和と洋の“融合(fusion)”という言葉がここまで相応しい店は珍しい。茶室を醸すような空間でいただくフレンチは、素敵な世界観が待っている。

本日のレストランは、こちら。

茶文化とフレンチの融合。

「オーナーの意向として、日本の伝統や文化を発信するにあたり、茶道やお茶は良い橋渡しになると考えているそうです。」

そう答えてくれたのは、経営と料理を一任されている小坂考弘シェフだ。

日本料理『ふしきの』のオーナーの奥様から誘われて、立ち上げからお店を切り盛りする。若宮町にあるアンティークと器のお店であり『マルガメ』でシェフを務めていたときからの付き合いだ。※現在、店があるがワインバーはCLOSE。

古民家の“顔”はそのままに

当店のオープンは、2020年。神楽坂には外観を損なわないようにと施工をする上で、外側にはこだわりがある方が多い。当店は、有形文化財の「一水寮」も保有する大家さんの意向で、外観はそのままの形でリノベーションをして、お客様とコミュニケーションをする。

この立地は、現在は四ツ谷に移転をした「珈琲日記」のある場所だ。その店を改装して階段を増やし、カウンター席からの厨房を繋ぐルートをつくった。(まだGoogle MAP上では、前店舗の情報が出てくるが、MEOを強化していけば次第に情報更新がされていくだろう)

2階には美しい器のギャラリーが併設

「審美眼のあるオーナーが、とにかく器が好きなんですよ」と、小坂シェフ。オーナーの意向から、2階では陶器の販売もしている。名だたる作家の器が陳列されているので興味深い。

かくいう、小坂シェフも料理で使用する器は、自分で古典やギャラリーに出向いて日本作家さんから直接購入しているそうだ。

小坂考弘シェフは、20歳で渡仏してAix-en-Provence(エクスバンプロバンス)の1つ星『le clos de la Violette』で修業。帰国後は奥沢の『ラクープ』や、日本橋の『オーグドゥジュール メルヴェイユ』などで研鑽を積み、和食の技術なども学んだ。三鴨朋典氏とブライダルの立ち上げにも参画をした経験もあり、36歳で『HASABON』の厨房に立った。

斬新な食材を巧みに操る小坂シェフとコラボレーション

そして、本日は、クロアチア産の『プレミアムパンプキンシードオイル』との一夜限りのコラボレーションメニューを提供していただいた。パンプキンシードオイルを使ってみての感想をうかがった。

「かぼちゃの種オイルは、フランスにいたときも出会ったこともなかったオイルで、大変興味深かった。パンプキンシードオイルはコクが強いので、少量で色んなバリエーションができると思う」とのフィードバックがあった。早速、コース料理を紹介しよう。

蝦夷鹿のハムとブルーベリーのカナッペ

アミューズ。「もともと鹿肉とブラックベリーは相性がよくて、クリームチーズとベリーも相性がよいです。なので、オリジナルで今回はブルーベリーと合わせました。」と小坂シェフ。ブルーベリーとクリームチーズの上にすりおろした鹿ハムは、自家製。赤ワインのソミュール(ハーブ、スパイス、塩)を入れて鹿肉を1週間漬け込み、塩気を抜いてから脱水して1か月干す。冬の時期にネットに入れて乾燥した保存食。地元のベーカリー『パン・デ・フィロゾフ (Pain des Philosophes) 』のバゲットにオン。塩味と果実味の合わせ方が秀逸だ。ブルーベリーに微かな酸味があることを計算し尽されていた。

太刀魚とルバーブ 胡瓜のテリーヌ 

太刀魚は、低温で火入れして皮面を炙る。ルバーブは、赤ワインビネガーと塩でコンポートに。キュウリは紫蘇と一緒に浅漬けにする。これらをランダムに切って、トマトコンソメのジュレで固めた。手の込んだ料理だ。「ルバーブは、60℃の高温でコンポートにすると食感が残って美味しいんですよ」と小坂シェフ。

なるほど、ルバーブの使い方までは細かく知らない人が多いのではないだろうか。勉強になる!そして、この料理は、ここで完成しない。このテリーヌからローズゼラニウムとレモンバームのコンブチャとトマトコンソメのスープを掛け合わせる。

コンブチャとは、「昆布茶」ではない。コンブチャは紅茶キノコを発酵させた少しだけ甘味のあるハーブ水のようなもの。水、紅茶キノコ、各種ハーブ、砂糖でつくられる。紅茶キノコが砂糖をエサとして酢酸と乳酸菌に変えることで、滋味深い味わいの健康的な水となる。紅茶キノコを取り出す時期によって、味わいの調整ができるので、料理にも使っているそうだ。

ポロネギの冷製スープ 出汁のジュレ 蓴菜 パンプキンシードオイル ナスタチウム

ヴィシソワーズのスープ。小坂シェフによると「ポロネギを多めにして、じゃがいもを少な目にしています」とのこと。割合が決めてなのだろうか。大変美味しく、胃がもたれない。まだ3品目だからこそ、この滑らかさと塩加減が心地よい。

また、ブイヨンを使わないこともポイントだ。たいていのスープはブイヨンで延ばすが、小坂シェフはホタテの出汁、鰹出汁を割って活用する。ここにも和食のテクニックが見え隠れする。「この方が、清涼感が出るんですよね」と語るシェフ。仰る通り、夏の風物詩の生じゅんさいと出汁がとてつもなく相性がよい。

ナスタチウムは、金蓮花のこと。ハスのような丸い葉っぱをつけて、金色の花をつける。葉、花、果実、種子は辛みと酸味があって食用になるので、サラダや彩りによく利用される食用ハーブだ。金沢の能登半島の真ん中で農薬を使用しないで栽培している「あんがとう農園」から直接仕入れている。

「食用ハーブって現地でそのまま食べると、こんなにも美味しいと気がつきます」

ポロネギのスープの仕上げにはパンプキンシードオイルを合わせた。「こちらのプレミアムパンプキンシードオイルですが、使ってみてネギと相性がよいと思いました。」とのこと。色味のコントラストもまた美しかった。

鮑 米と黒ニンニクサラダ 賀茂茄子 抹茶クランブル バジル

まず、蒸し鮑をパンプキンシードオイルで絡めておく。鮑とパンプキンシードオイルは、マリアージュが最適である。数多くのシェフが、実際にこのオイルを鮑と合わせてきたのが、お互いを引き付けられるものがあるからなのだろう。

米と黒ニンニクサラダは、米を茹でてシェリービネガー、黒にんにくをと合わせて黒酢のような味わいをつくって出汁で炊いた賀茂茄子を添えていく。また、抹茶パウダー、小麦粉、砂糖、バターなどでザクザクっとした生地のある抹茶クランブルとバジルがアクセントになっている。

もともとクランブルとは、英語で「ぽろぽろと崩れる」という意味があり、そぼろ状にしたイギリス発祥の生地だ。 「抹茶の旨味はグルタミン酸に親しいのです」と語っていた。なるほど、だから鮑の旨味と抹茶を合わせていたのか。旨味成分の組成でマリアージュさせるのが、料理人なんだと実感。パンプキンシードオイルと鮑、そして加茂茄子がほどよくマッチする。

せせり とうもろこし 生ウニ キャラメリゼソース

鶏せせりは、琥珀鶏。味わいが淡泊で逆に他の食材を引き立ててくれる。ネックの部位なのに淡泊で、いやらしさがない。こちらに北海道産の塩水ウニを合わせた。

夏を感じさせるゴールドラッシュを焼いて、ピューレに。っして醤油を隠し味としてキャラメリゼソースをつくった。 ポイントは、「ティエド(tiede)」だ。フランス語で「常温」を意味していて、フランスでは、ぬるい温度帯の料理が存在するのだという。温かくもなく、冷たくもない温度帯。温×冷を掛け合わせるのは「ショーフロア」と呼ぶそうで、これとはまた異なる。常温を保つ料理であるが、平常心ではいられない美味しさがある。

オマール海老 パンプキンシードオイルの泡 素麺ズッキーニ きのこピューレ バスケーズソース 

感動して、何度も感嘆をしてしまった料理の1つ。オマール海老は、半レアな状態でぷりぷりの食感。パンプキンシードオイルのエスプーマが随所に置かれて、香りを纏う。素麵状にカットしたズッキーニを下に敷く。スライスしたエシャロットを炒めてから、ブラウンマッシュルーム、舞茸を炒めてから牛乳でピューレ状にする。これらの旨味が相乗効果をもたらしていた。バスケーズソースは、アメリケーヌソースの“バスク風”を指す。ハーブ、パプリカ、ベーコン、マッシュルームと海老のアメリケーヌソースを混同させる。 「バスクは、フランスとスペインの間にありますからね。両方の食材を活かすソースや調理が多いですよ」と小坂シェフ。今日は、いくつもの発見がある。

走る豚のロースカツチョリソー、赤玉ねぎ、紅玉の赤ワイン酢とパンプキンシード煮込み 

こちらは熊本県「やまあい村」で飼育されたの豚。実際に思いっきりのびのび現地で豚が走っているため、走る豚と命名されているそうだ。大変希少で、半頭からしか出荷がされない。

『自然に沿った方法で山里を管理し生きることそのものである食べ物を育てる』という武藤さんのコンセプトのもと、放し飼いで育てている豚。小坂シェフも現地を訪問して「豚って、こんなに走るんだと衝撃でしたw」と語っていた。ぜひ、光景を目にしたいものだ。

今宵は、ロースをカツレツにして、イベリコ豚のチョリソーで燻製をさせてパンプキンシードオイルを少し冷めてから、くぐらせる。燻製の香りとオイルn香りが豚肉を繋いでくれる。

なにより、この豚の甘みは秀逸だ。あえて、黒豚をかけあわせない三元豚。黒豚をかけあわせると骨太になり、コストがどんどん上がってしまうためだという。生産者の想いも一緒にいただいた。

チョコレートムースとアメリカンチェリー

最後のデセールはチョコレートのムースとアメリカンチェリーを。カカオのチュイールにパン・デピス(スパイスが入ったパウンドケーキ)を粉末にしてふりかけたもの。素材にナッツのヌガーを入れており、このデザートは、「フォレノワール」という菓子からインスピレショーンを得ているという。

編集後記

「身近な食材で、ユニークな組み合わせをさせることで、お客様に驚きや歓びを提供したい」

小坂シェフの言葉が印象的だった。

有言実行。小坂シェフのポリシーは、間違いなく料理に伝わっているからだ。

とある和食の料理人の言葉が脳裏によぎる。その料理人は、「鮪のような高級魚は、そのまま食べるのが一番美味しい。そして誰がやっても美味しい。だから料理人の醍醐味は、市場で安かった白身でもあっと言わせる料理に昇華させることなんですよね」と。

これから食材が高騰する中で、工夫を凝らしていく。これからも調理法を学び、色んなパターンと食材の料理を融合させていくことが、小坂シェフにとっての楽しみであり、やりがいであるそうだ。「1オペ(1人で調理からサーブまですること)だったのですがスタッフが揃い始めて茶道体験やティーペアリングも始めることができた。今後に期待してほしい。」 茶室に招かれたような落ち着いたの空間の中に、シェフの熱い鼓動を感じた。

HASABON

東京都新宿区横寺町30 神楽坂茶ノ木テラス 101
TEL:03-6427-5448
東西線神楽坂駅から徒歩1分
17:00~23:00(LO.21:00)
※水、木、土、日のみランチあり
11時30分-15時(LO.14:00)  定休日:月 ※火(月に1回のみ)

Presented by 株式会社イイコーヒー

#pr 今回の記事のスポンサード企業は、株式会社イイコーヒー。株式会社イイコーヒーは、チョコレートドリンクやクロアチア産「プレミアムパンプキンシードオイル」の卸販売をしています。個人のお客様のオイルの購入は、下記から可能です。

https://grbic.base.shop/

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THE SEAMLESS JOURNAL編集部

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